知らない国の
知らない街を
地図のにじむ手でたどっていた
スーツケースの車輪が
夜の舗道にやさしく音を置く
「ここはどこ?」
そう聞くようにして
ケアンズの風は
熱を抱きしめたまま
背中を押すように
わたしを南へと運んでくれた
途中、笑ったことも
迷ったことも
ぜんぶ旅の余白に描いたスケッチ
そして
2008年の一月
ハイドパークの木々の隙間から
こぼれた光の中に
わたしは立っていた
まだ何者でもない
でも、確かに生きている
「私もやればできるじゃん」
誰にも聞かれない心の声を
自分だけが知ってる強さに変えて
そっと一歩、踏み出した
住むなんて思ってなかった
けれど
気づけば
ここが「帰る場所」になっていた